NEURODIVERSITY・UNITED
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サヴァンという総合芸術

 

サヴァンは人類の歴史の重要な一部であり、いつの時代も私達の進化には不可欠な存在です。ここではサヴァンに関する基礎知識と、サヴァンの一種として生まれた私個人の視点からニューロダイヴァーシティについて書きたいと思います。

 

サヴァンとは脳の一部分が僅かに‘多めに覚醒’している状態のことをいいます。人によって部位は異なります。人間は誰もが同様の脳力を秘めていますが、大多数の方々はサヴァンと呼ばれるほどには活性化されていない状態にあります。一般的によく知られているのは音楽、計算力、記憶力のサヴァンなどかと思います。私自身のサヴァンの種類に関する情報は控えさせていただきますが、脳の特定の部分が少し多めに覚醒していること、尚且つAS(アスペルガーを含むニューロマイノリティの一種)の持つ多様な能力が備わっていることにより、幼いころには以下のような特徴がありました:
 

5~6歳の頃には、自分自身を含めた全てが“砂状のもの”で出来ている;‘砂状’にある時には対極にある全てのもの(重い・軽い、大きい・小さいなど)は共存して一つとなっている;‘砂状’から目に見える物質へと変化する時に対極が生まれ、測ることが可能な状態となるーなどといったことを、自身のマインドの中から割り出して母親に話していました。

 

そして、私達が宇宙の一部として漂う小さな砂粒のようなものであるという認識に物質世界と自身の存在の儚さを感じ、夜泣きをして幼い言葉で母親に訴えるような子供でした。

 

上記は物理学や哲学、仏教やスピリチュアリズムなどの根元とも言えるようなものですが、その他には脳科学方面の探求なども子供の私には楽しい遊びでした。例えば、人間の脳内で‘言葉’が形成される過程ーとくに潜在意識から意識化へと‘言葉’が移動される際の距離感と形状の変化などに興味を持ち、一人で実験していました。

 

【遊びは至高のリサーチである】-アルベルト・アインシュタイン

 

しかし、“サヴァン”と呼ばれる部分の覚醒だけでは上記のように様々な認識には達しません。それに適した情報収集能力;情報処理能力;分析力;記憶力;集中力;好奇心;探求心などが伴うことで初めてサヴァンとして活かされ、物事を認識し、分析し、構築し、理解するに至ります。そのプロセスは特に意識して考えることなく、自然と行われます。他のサヴァンー例えば音楽などでも、優れた五感や深い集中力を含め、そのサヴァンを活かすための様々なファクターがバランス良く揃っているからこそ成り立っているのではないでしょうか。サヴァンはまさしく総合芸術であると言えるでしょう。

 

正しくは、ニューロマイノリティのクリエイティヴな脳の延長線上にあるのがサヴァンなのです。

 

NT(定型脳)においても数学が得意な方、文学が得意な方、スポーツが得意な方など、個々に能力のヴァリエーションが存在します。それぞれの分野において‘ギフティッド’と呼ばれるカテゴリーに属する方々もいます(この枠にはニューロマイノリティもある程度含まれていることでしょう)。ニューロマイノリティは特に高い創造力を有しています。ニューロマイノリティ間における‘ギフティッド’の表れ方は、時としてマジョリティの目には極端に‘特異’で不可解に映るのでしょうーそれによって、‘サヴァン’という特別枠が設けられたのではないでしょうか。

 

現在普及しているサヴァンに関する情報は、その大半が誤想にまみれています。ニューロダイヴァーシティ・ムーヴメントに伴い、社会のサヴァンに対する理解も向上させてゆく必要があります。

 

ASの約10人に1人がサヴァンと言われているようですが、正確なところを把握するのは難しいと思います。自身がマジョリティいわく‘サヴァン’と呼ばれるカテゴリーに属するであろうという自覚があったとしても、そう公言される方は希少ですー大抵の場合において、公にすることにはデメリットしかありません。また、‘サヴァン’などというラベルや枠組み自体が皮相的なものであり、そういった視点を好む方は少ないでしょう。しかし、ニューロダイヴァーシティ・ムーヴメントに伴い、これからは必然的にサヴァンである当人達がそのラベルの持つ意味合いを形成してゆくのではないでしょうかーこれは私達サヴァンの創る総合芸術とも言えます。私はその作品がサヴァンの本質を反映するものに仕上がることを期待しています。

 

私がサヴァンであることを‘カムアウト’した理由は、サヴァンがニューロマイノリティの本質の象徴でもあるからです。脳の多様性に沿って研究を進めてゆくことによって、人類はニューロダイヴァーシティの枠を遥かに超えた、宇宙とその生命に関わるあらゆる方面での科学的知識を得る方向へと進んでいます。現時点ではニューロダイヴァーシティ・リサーチの延長線上にサヴァンの存在がはっきりと見えており、その先にすべての科学の根源である‘未知’が在ります。

 

研究により歴史上の著名な科学者、哲学者、作家、アーティストなどがニューロマイノリティであったであろう事実が次々と解明されている昨今、‘特異’な能力を表す子供たちに対する関心は以前にも増して高まっているようです。サヴァンの子供を対象とする研究者達に、ニューロマイノリティの人権問題が深刻な現状の中でメッセージを伝えるならば、私はこう言うでしょう:「サヴァンを科学的に解明したいのであれば、NTのマインドを探究すると良いでしょうーあなた達の求める‘答え’は、すべてそこに存在しています」

 

【私達は己の限界を受け入れた時に、その限界を超えるのだ】

-アルベルト・アインシュタイン

 

近年においてASの出生率が急増しており、それは“診断”によって存在が確認されるケースが増えたという理由だけでは説明がつきません。生物学的視点から見れば、それが自然界における健全な現象であることは安易に理解可能であり、同時に‘なぜ’その現象が起こっているのかも明確であり、更には私達人類が‘どう’行動すべきかについても把握することができます。

 

例えは限りなくありますが、ここでは‘人類’というものを‘人体’の規模に縮小して捉えると解りやすいでしょうー‘人類’という生物にとって、私達人間の働きは‘人体’における血液の働きと同様です。NTは赤血球のように、ニューロマイノリティは白血球のように機能しています。赤血球の主な役割は資源などの‘循環’による生命維持です。白血球の主な役割は‘治癒’による生命維持です。

 

【自然界を深くのぞき込めば、あなたは全てをより良く理解するだろう】

-アルベルト・アインシュタイン

 

私達ニューロマイノリティはマジョリティとは異なる性質を持ち、マジョリティとは異なる生態的役割を担っており、必然的にマジョリティとは異なる能力を所持しています。従って、私達とは物事の基準がまるで異なるNTに支配された、NTのために構築された社会環境の中で、NTのふりをしてNTのように機能することにおいては、当然ながら私達は非常に不利です。私達はそうした不自然で不健康な生き方を強いられるべきではありません。

 

私達ニューロマイノリティが創り出すものは、それが科学、芸術、思想、その他どういったものであっても、表現方法には関わりなくある種の‘影響力’を持っています。それらは時代に合わせた適切なタイミングにおいて、適切な目的のために、もっとも効果的に社会と共有しなくてはなりません。ニューロマイノリティの多くが持ち合わせる正直さ、率直さ、博愛精神、社会的正義感、そして既存の常識に左右されない独自のモラルと価値観は、私達ニューロマイノリティが人類の進化を促す活動において的確な判断を下すための有徳でもあるのです。

 

【私は日常の中では典型的な一匹狼ですが、真実、美、そして正義に向かって前進する目に見えないコミュニティの一員であるという認識が、私に孤立感を抱かせなかったのです】

-アルベルト・アインシュタイン

 

現代社会がニューロマイノリティの存在を活かすためには、私達を抑圧せず、私達が特殊であることを尊重し、私達が本来の姿において活動可能な社会的環境を築く必要があります。それが真の‘社会的平等’であり、人類社会が私達の能力を最大限に引き出すための唯一の方法ではないでしょうか。

 

今の不穏な時代を生きる人間は、人類と地球の健康維持のために、ニューロマイノリティ特有の生態的働きを十分に活性化させる必要に迫られているのではないでしょうか。

 

なぜ‘今’、ニューロダイヴァーシティ・ムーヴメントが起こっているのかーこれらを考思した上で、私はニューロダイヴァーシティ・ムーヴメントによるパラダイムシフトを全面的に支持しています。現段階においてはニューロマイノリティの人権確保が最優先事項であると考えるからです。

 

【偏見よりもアトムを砕くことのほうがまだ簡単な時代に生きることは、なんと憂鬱なことか】-アルベルト・アインシュタイン

 

長い目で見れば、ニューロダイヴァーシティ・ムーヴメントとその目標が達成されることによって人類社会に起こる認識および価値観の変化さえも、人類の進化における通過地点に過ぎません。しかし、その道のりを一歩ずつ丁寧に、着実に踏みしめながら次の足場を築いてゆかないことには、人類はその先の未来に在るものを受容する脳力を養うことはできないのです。

 

人類そのものが一つの総合芸術です。あなたがどのニューロタイプに属していようとも、どこで何をしていようとも、あなたは誰にも劣らずこの「人類」という壮大なアートに貢献しています。あなたのマインドが表現するものは一つ残らず私達の作品に組み込まれてゆくのです。自然界が生み出すものに‘無駄’は存在し得ないと、私は確信しています。

 

桑沢 美由紀

 

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© Miyuki Kuwasawa - September 6, 2017